top of page

​▷少年のすゝめ         !ショタ化

 

 

 はからずも熱い息が漏れた。待ちかねていた、と。

 いつものようにオイルを手のひらで充分に温めると、しなやかな真珠色した足を己の膝の上に誘導し手を這わせていく。光る帯をつ、と描く手がいつもより頼りなくて内心で舌打ちした。足首を拘束することもままならないぐらい短い指では、満足にマッサージすることもできない。ソファに身体を預け不思議そうにこちらを見下ろしていた長谷部は、固まってしまった大倶利伽羅の髪をくしゃりと撫でて、「無理をするな」と囁いた。

「無理などしていない。俺がしたいんだ」

 会えるのは何日振りだと思っている。

 続けた言葉はうまく音にならなかった。不満を募らせてばかりの己に嘆息しながら、御手杵の気が抜ける顔を思い浮かべる。あの槍のせいではないのだが、元凶でもあるのは事実で、八つ当たりしたくてたまらない気持ちになった。明日あったら一発殴ると決め、うまく力の入らない指をきめ細かい肌に沈めた。

 

 笑い事のようでいて厄介なウィルスを拾ってきたのは暇を持て余した槍、御手杵だった。

闇市で買ってきた怪しい酒を寝酒に飲んだ彼が次の日、目覚めると身体が幼くなっていたのだという。混乱しながら部屋を出たところに運悪く出くわしてしまったのが大倶利伽羅で。ウェ〜だか、なんなんだよ〜だか、呻いている短刀ほどの小さな奴にぶつかり、思わず抱き上げてしまったのがよくなかった。首元にしがみつかれぽかんとした、瞬きのうちに視界が低くなっていた。緩いテンポで嘆く御手杵の声を聞きながら呆然としていた大倶利伽羅の身体が、ふっと浮いて見上げると、極めた五虎退の虎に咥えられていて、そのまま離れまで連れて行かれたのだ。御手杵をくっつけたままなものだから、首がしまってあれは地獄だった。

 

 連れて行かれた先で相対した審神者曰く、刀剣男士が小さくなるウィルスが猛威をふるっている。皮膚接触で情報を交換し細胞を書き換え、次々と感染していく恐ろしいもので、申し訳ないが君らはしばらくここで暮らしてもらう。特効薬はまだないらしいんだけど、細胞は代謝するから一ヶ月ほどで元に戻るのではないかという見通しだ、と。審神者は朝一で回ってきた緊急通達に慌てて近侍の五虎退に虎を使って見て回るよう言ったのだという。

 そんなこんなで隔離されているうちにワクチンが開発され、本丸の全員が摂取したということで大倶利伽羅と御手杵はやっと解放されたのだ。

 

 三週間振りの逢瀬、こころが浮き立たないはずがないだろう。

 だというのに、戦えない小さな身体は思い通りにならない上、長谷部の態度が苛立ちに拍車をかける。彼は思っていたよりも小さきものが好きだったのか、先ほどのように大倶利伽羅を子供扱いしては微笑ましそうに笑む。まさしく猫可愛がりといったふうになでまわし、膝に乗せしきりに抱きしめたがり、まろくなってしまった頰をつついては、くつり、おかしそうに笑う。長谷部は絶対に小動物を構い倒して嫌われるタイプだ。

 おい、あんたはそんなに笑う奴だったか。

 久しぶりに会える己の男をつかまえて、それはどうなんだ。

 屈託無く笑う長谷部は可愛いのだが、釈然としないものを感じても仕方がないはずだ。思わずぐっとツボを押す指に力を込めてしまったが、相手にさほど効いていないことは筋肉の反応でわかる。少し落ち込んでマッサージを切り上げ、張りのある腿に頰を寄せた。

 大倶利伽羅の髪で指が遊んでいる。普段ならくすぐったくも心地よい指も、いまは何もかもがかんに触る。これで終わりにするものか、男の矜持がちりりと燃えた。

 腿から上に手を忍ばせ、乗り上げるように押し倒すと長谷部は少し恥ずかしそうに頰を染めた。肌に滲む血の色は好きだ。

 好ましい表情に気持ちが緩んだのもつかの間、いつものように手を滑らせ、衣を剥いて肌に吸い付き、舌を這わせても、何もかもが足りない。段々と手つきが荒くなるのを抑えられないでいると、小さな唇でする口付けの合間に長谷部は目尻を下げた。

「……かわいい」

 思わずといったふうに漏れた言葉が大倶利伽羅に火をつけた。目をすわらせ、ひとつ深呼吸をすると、触れるか触れないかの優しさで肌をなぞる。慣れない刺激を受けて、くすぐったそうに身をよじる身体を追いかけては産毛を逆だてるようになで、爪先でつぅと線を描く。背がしなり嫌々と頭が振られた。彼が弱い肉付きの薄い肋骨にそってやわやわと辿り、時たまくぼみを抉る。

「あっ」

 汗をうっすらとかき震える肢体が大きく跳ねて、やっと大倶利伽羅は口角を上げた。全身を使って押さえ込み、皮膚の薄い脇を舌でくすぐってから徐々に触らずとも誘い立ち上がっている胸の尖りに近づける。無邪気にミルクを舐める猫のように短い舌でなんどもなんども転がし、声が一段高くなったところで吸い付く。髪をぎちりと掴まれ眉根を寄せれば、抱きこむような形に変わった。

 赤子の気持ちとはこんなものなんだろうか。

「ん、んぅ、ん」

 上目に長谷部の蕩けた表情を映しながら尖りを嬲っては吸い付き、転がしては柔く噛む。長谷部の震えが激しくなるほど、もっともっと乱れさせたい欲が加速する。

 名残惜しげに口を離すと長谷部の身体がほっとしたように弛緩したのを感じたが、今度はもう片方を可愛がってやる。唾液にまみれぬらりと光る尖りは小さな爪で穿りながら、ぢゅうぢゅうと吸い上げた。

「ぁ、アッん、あ、ぁっ」

 あられもない声に幼い身体は歓喜する。勃ち上がった頼りない雄を同じく硬くなった長谷部の雄に擦り付けながら、まるで口の中に甘露が広がるここちで乳首を舐り続けた。龍の怒りはしつこいことを思い知らせたいだなんて、傲慢な考えが浮かび少し動揺する。

 不意にびくりと長谷部の身体が揺れ、大倶利伽羅の腹に生温かい感触が伝った。胸への刺激だけで達してしまった長谷部の荒い呼吸をする唇にひとつ口付けを落とすと、とろりと濃い白濁を伝わせている性器の方に移動する。陰嚢をつつき、ちゅうと残滓を吸い取ってから皮膚の薄い足の付け根を指先で辿り、後孔をくるりとひと撫ですれば、濡れた感触に目を見開く。

「……ひとりの部屋は…静かすぎて……お、おれだって、寂し、かったんだ……」

 ああ、毅然とした男をこんな甘ったれにしてしまったのが己だと思うとたまらない。潤んだ瞳の甘そうなことといったら。

 ぶるりと背が震えた。容赦無く細い指を三本まとめてねじ込み、熟れきった穴を広げる。

「っっんぁ、ぁあ、ん」

 充分にほぐれ待ちかねている襞のざわめきに、飢えた獣のように息が上ずっていく。

「…はせべ、脚を抱えろ」

 わざと命令するように言えば、頰を染め上げおずおずと持ち上がっていく脚に舌なめずりをする。息づきしきりに誘う隧道に雄を突き立てた。

「ぁあっ」

「ん」

 ぎゅうぎゅうと包み込んでくる粘膜に翻弄される。久しぶりの長谷部の身体は熱烈に雄を歓迎し、はくはくと咀嚼していく。

「んぅ、ぁ、ぁ、ぁ」

「は、は、はっ」

 汗を降らして盛りのついた犬のように腰を振り打ち付けるほどに違和感が姿を現した。

足りない。この小さな身体に付随する雄では、長谷部の胎を食い荒らす力が圧倒的に足らない。

 くそっ。

 思わず悪態が口をついて出た。ぐねぐねと蠕動して雄を扱く襞のみだりがましさが頭をぼぅっとさせる。こちらが翻弄されるばかりで、長谷部を忘我の境地に突き落とすことができない。

「あっ、ぅ、ぁ」

 背筋を伝う悦楽に溺れるような喘ぎが大倶利伽羅の口から押し出された。長谷部は蕩けた顔で熱っぽい吐息を漏らし、嬉しそうに微笑む。かっと頭に血がのぼった。

 くそっ、くそっ。

 ガキの身体は我慢が利かない。

 そして、こころも。

 ひどく加虐的な気持ちになって、大俱利伽羅の陰茎を飲み込んでもまだ余裕がありそうなほとに指を這わせると親指をねじ込んだ。

「まっ、あっ、やぁぁっ!」

 手前側の弱い部分をまさぐりながら打ち付ける速度を速くする。入り口近くの襞を指の腹で丹念になぞりながら、のたうつ長谷部の手から離れた片足を抱え上げ、ことさら弱いしこりを陰茎で集中的に抉る。

「あっあっあっ、だめ、や、あ、ぁん」

 余裕の崩れた悶えように、腹に熱が溜まり唾が溢れる。己の指の感触が自身にも響く。

「んんぅぅっ、ぁ」

 長谷部の雄から白濁がまき散らされるのを目に映しにんまりと笑むと、抱え込んだ膝に吸い付きながら胎に搾られるまま思う存分射精した。

「ん、はっ、は、はぁ」

 くたくたの身体で長谷部の上に倒れこむ。胸にまで飛び散った白濁が目に映り、まるで母乳のようだと無意識に幼い舌を這わせていた。




 

 目を開けると大倶利伽羅の身体は布団に横たえられており、長谷部の緩んだ顔が隣にあった。行為の後、そのまま眠ってしまったようだ。後始末も何もかも長谷部にやらせてしまったのかと思うと情けない。

「……何を見ている」

「お前の顔だ……いつもと違って表情が出やすいからなぁ……たのしい」

 そういうことかと眉間に皺をよせ考え込んでいると長谷部が途端に眉尻を下げた。

「俺がしつこいから怒っているのか?……知ることの楽しさを教えたのはお前ではないか」

 わずかに唇を尖らせ瞼を震わせる。

 ああ、そうだ。感情も欲も大倶利伽羅が暴き教えた。

 彼が依然と比べ極めて自然に笑うようになっていることに気付いて、くぅと胸が鳴いた。

「……怒ってない……男の矜持の問題だ」

 小さくなったことも一時的ならば悪いことではなかったか────、

「ふふ、お前のいつもより高い喘ぎ声可愛かったなぁ」

「…………」

 長谷部がぽぅっとしたような顔で言うものだから、こらえ性のない小さな身体は、再度苛立ちを爆発させた。

「っかわいい、とかっ、いうな!」

 上掛けを跳ねのけ、うっぷんを晴らすべく大倶利伽羅は、小さな手で散々長谷部をくすぐってやった。




 

 ころころとした無邪気な笑い声が聞こえる部屋の前で、五虎退は書類を片手にひとつ微笑むと踵を返した。急きょ変わった編成の意見を長谷部に求めがてら、小さくなってしまった大倶利伽羅の様子を見ようと思っていたのだが、今でなくともいいだろうと頷く。

 だって、あんなに楽しそうなところを邪魔しては悪いから。

 後ろをついて歩く虎がくるると喉を鳴らした。

「……仲良きことは美しきかな、だっけ」

「仲良すぎるのも鬱陶しいですよ」

 にゅっと出てきた細い手が書類をさらった。

「宗三さんっ」

「僕が見てあげます」

 いつもの物憂げな様子で部屋から出てきた麗人は、うるさいのと近いと煩わしいですね、とぼやきながら近侍部屋へ同道する。ふたりとうるさいという言葉があまりにもそぐわなくて首を傾げた。ただ、これだけはわかる。

「優しいんですね」

「……憐れんでいるんですよ」

 不本意そうな顔で憎まれ口を言う。

 夜ごとめそめそうるさいものだから寝不足です。

 小さな小さな声が言うことが想像できなくて五虎退はぱちりと瞬きをした。

「はぁ、めんどくさい……まったくふぬけて……」

 背中から追いかけてくる笑い声との落差に五虎退はこっそりと笑った。







 

くりへしワンライお題「短刀」

​16/06/2017                                    

 © 2018 0441. Proudly created with Wix.com

  • Twitterの - 灰色の円
bottom of page